読書感想文の書き方!シンプルな手順と4つの心がけでお悩み解決
毎度おなじみ、室長のコラムです。第3回目のタイトルはずばり、読書感想文!
受験勉強とは直接関係ありませんが、国語の専門塾として毎年学生を悩ませるこの課題に触れないわけにはいきません。
読書感想文の苦手な人はよく「何を書いたらいいか分からない」と言います。「原稿用紙3枚も書くことなんてない」とも。一方、得意な人は「思ったことを書けばいいじゃん」とこともなげに言います(笑)。この両者の違いは何なのでしょうか?
私が思うに、苦手な人ほど「上手に書きたい」という意識が強くなる傾向があります。
読書感想文のコツその① 上手な文を書こうとしない
まず、上手な文とはどのようなものでしょうか?以下の例を読んでください。
- 例1 )「父が、逮捕された。自宅には家宅捜索が入った。毎日「いってきます」と「ただいま」を繰り返す門扉は、マスコミ陣で埋め尽くされた。
(中略) テレビドラマでしか観たことがないようなことが自分の家で起こっている。しかし、私はその現実を巨大なシャボン玉の中から眺めているような違和感でしか受け止められなかった。「渦中の人」は、台風の目の中にいて、時の流れが他と少し違うところにいるものなのだ。」
(第65回全国小・中学校作文コンクール 中学校の部 文部科学大臣賞 より)
- 例2)「漱石文学の核に潜んでいるのは、おそらくこの寄席趣味に象徴される江戸的な感受性である。それは感性的なあらわれかたをすれば長唄に「恍惚(うっとり)」するような感覚になるが、倫理的に表現されれば儒教的な正邪曲直の観念となる。そしてこの美意識と倫理観は、実はわかちがたくまざりあっていて、彼の文学を特徴づけているのである。」
(『坊っちゃん』夏目漱石・新潮文庫 解説『漱石の文学』江藤淳 より)
どちらも純粋な感想文ではありませんが、自身の思いをつづっているという点では一緒であり、タイプは違いますが文章が上手です。
何をもって両者の文章がうまいとするのかはさておいて、こういう文章が作文の苦手な人に書けるでしょうか?無理でしょうね。たぶん。
作文を書くにあたって、まずはこのような理想的な文章をお手本とするのはやめましょう。
ではどんな文章を目指せばいいのでしょうか?答えは、「つまらない文章」(笑)です。
読書感想文のコツ② つまらない文章を書く
ONEスタイルアカデミーでは、作文指導にあたって「型」を用意して、それに従って書かせるようにしています。型どおりに書けば、少なくとも何を書けばいいのか分からないことはなくなるし、文章の上手下手の差も出にくくなります。
読書感想文の型は以下のようなものです。
- あらすじ
- なぜその本を読もうと思ったのか
- 印象に残った箇所
- 3についてどう思ったか
- なぜそう思ったか
- 関連する自分の体験・エピソード
- 3~6を踏まえて、今後どうしていきたいか
とりあえず、この型に従って書いてみればどうですか?これだけネタがあれば、少なくとも原稿用紙で2枚分ぐらいは書けるでしょう。
言うまでもなく、最大のポイントは6です。字数を稼ぎたいのなら6でどうぞ。
1とか3でかせぐのはやめましょう。うまいか下手かではなく、やる気が感じられません。
逆に言えば、6がありそうな本を選びましょう。
- 例1)サッカー好き→ワールドカップを見た→『心を整える』(長谷部誠)→自分のサッカーの試合の話、練習中の話など
- 例2)毎週火曜日のゴミ出しは僕の仕事、めんどくさい→『コロッケ先生の情熱!古紙リサイクル授業』→何でこんなことしなきゃいけないんだろう?→ニュースで環境汚染について特集していた、など
関連するエピソードや興味のまったくない本は選ばない方がいいです。
本が指定されている場合はあらすじを読んで、自分の興味や経験につながりそうか確認しましょう。あらすじはネットで調べればいくらでも見つかります。
読書感想文のコツ③ いきなり書かない
苦手な人ほどいきなり書き始めます。これは無謀というもので、映画を作るときに台本もなしにいきなり撮影を始めるようなものです。
まずは書くためのネタを箇条書きにして並べてみましょう。特に3について。思いついた場面や内容を書き出します。1か所だけでなく、思いつくところすべてを並べます。
次にそれぞれの内容について、6の自分のエピソードがあるか確認します。少なくとも2つは作った方がいいです。
実際にやってみましょう。題材は『ワンピース』です。漫画にしたのは、みんなが知っているのと、本だとそのままパクる人がいるかもしれないからです(笑)
箇条書き例)伊達藤矢くん(仮名)小6 が書いたとしたら
- 村を飛び出した少年ルフィが海賊王をめざして旅をする。途中でであった仲間とともに成長し、敵と戦ってどんどん強くなっていく。
- 友達が読んでいておもしろいと言われたから
- サンジが海上レストランを出ていくとき、オーナーに「クソお世話になりました」と泣きながら土下座をするシーン
- チョー感動した
- それまで仲間に対してぶっきらぼうだったサンジが泣きながらこんなことを言うなんて意外だった。本当に感謝していたんだと思う 。
- ・ぼくもお世話になった人はたくさんいるのにこんなにちゃんとお礼を言ったことはない。サッカースクールのコーチ、塾の先生、親など
・今までの仲間と別れて新しい場所に入っていくのって大変だよな。小2で転校したとき、新しい塾に入った時など - ・お世話になった人にはお礼をちゃんと言ったほうがいい。でもクソはつけない方がいいと思う。
・転校してすぐ少しいじめみたいのがあったけど、やりかえしたらなくなった。いじめっ子の○○君とは今もビミョーな関係。こういうこともある。いちいち気にしてもしかたない。みんなと仲良くなれるわけじゃない。
こんな感じです。
いいことや美しいこと、前向き・希望といったことにこだわらなくてもいいので、とにかく思いついたことを書いてください。書いているうちに別のことを思いついたら、それも書いておく。こうしてネタを作ってから書き始めるのです。
一見面倒な作業に思えますが、実はいきなり書き始めるよりもはるかに早く終わります。皆さんが作文に時間がかかるのは、何を書こうか考えている時間が長いからです。書くことは決まっているのだから、あとは書くだけです。
読書感想文のコツ④ 細かく詳しく長く
書くときは一つひとつのネタをなるべく長く。細かく表現してみましょう。ただし、1や3で長すぎるのはダメですよ。あくまでもボリュームを持たせるのは5、6、7です。
作文の苦手な人はとにかく表現を短くしようとします。感想が一言で終わってしまうので、文の量が足りず、説明も不十分で分かりにくくなります。
- 悪い例=短い表現
カレーがおいしそう - 良い例=細かく詳しく長い表現
カレールーの色が濃くて、いかにも煮込んでますって感じ。この店のご主人の気合が感じられますね~。鼻に抜ける香辛料のスパイシーなかおりが食欲をそそります。スプーンですくってみると、ルーがドロッとしていて私の好みなんですよね。大きめの野菜やお肉がゴロゴロ入っていて、食べがいがありそうです。よく見ると、お米の一粒一粒が立ってますね~。炊き加減も最高のようです!このへんもお店のこだわりなんでしょうか・・・(後略)(テレビのグルメレポーター風)
ポイントはとにかく一つずつ説明していくことです。見たことであればその見た目通りに、たくさんの言葉を使って細かく。できごとであれば、起こった順番通りに詳しく。表現がどうとか、間違ったらどうしようとかは考えずに、とにかくたくさん書きましょう。案外面白い作文になったりします。
添削(作文の直し)について
書くことができたら、できれば専門家に添削してもらうことをおすすめします。言葉は伝わらなければ意味がないので、ちゃんと考えていることが伝わるのかどうか、確認した方がいいです。
ただし、冒頭にも示したように専門家が望ましいです。
専門家とは、国語の先生、作文教室、国語専門塾(ONEスタイルアカデミーのような!)など。また、作家さんや新聞記者、コピーライターの方なども含まれます。これらの方は仕事で文章を扱っているプロです。
失礼ながら、保護者の方が添削をするのはおすすめしません。上記のような仕事についているなら別ですが、学歴の高さと作文の上手さが比例するわけではないですし、そもそも感情的になってケンカになる可能性の方が高いです(笑)。
近くに専門家がいないなら、とりあえず
- 型どおりに書いてあるか、
- 長く書いてあるか、
- 漢字が使ってあるか(使ってなかったら辞書を引かせる)
ぐらいにとどめて、あとは目をつぶりましょう。
作文の添削のルールに関しては、また機会があれば別の稿で述べたいと思います。かなり長く、難しくなると思います。
まとめ
いかがでしょうか。読書感想文でいつも悩むという人は、ここに書いてあることを実行してみるとよいでしょう。
もちろんこの他にもテクニック的なものはいくらでもあるのですが、結局のところ、文章が上手になるためには作文と読書の経験を積むしかありません。まずは簡単なことでいいので書いてみてください。たくさん書くことでしか分からないことがたくさんあります。
ここまで読んでも自分一人じゃできそうもない、そういう人は迷わずお問い合わせください(笑)。いつでもお手伝いしますよ。
ネガティブだっていいじゃない人間だもの、と思う 伊藤