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2026.2.11

国語ブログ「大事なところに線を引く・説明文編」

毎度おなじみ、ONEスタイルアカデミーの伊藤です。

・・・このブログもずいぶん間が空いてしまいましたね・・・。

ま、受験対応もあったし!済んだことは気にせず前に進みます!

今回のテーマは「大事なところに線を引く」です。よく聞くセリフだし、そう習ってきた方も多いでしょう。

ですが、私はおよそ国語指導の中でも一番論理的ではないセリフだと思います。

意外に思う方も多いかもしれませんが、今回私が言いたいのは「大事なところに線」は「引かない方がいい」ということです!

以下にその理由について説明します。

今回は説明文(論理的文章)について解説します。近いうちに物語文(文学的文章)についても解説したいと思います。

まずここでは例文として、『学問のすすめ』(福沢諭吉)の冒頭をあげます。本文の現代語訳(※本文の出典については本稿の最後に記載)を示します。結構な人が聞いたことはあるが、しっかりと読んだことのない文章のはずです。

まずは一度目を通してみて、ご自身の主観でかまわないので「大事なところ」について確認してみてください。

 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言われている。そうであるならば、天から生まれた人々はみんな平等で、生まれつきの身分や地位の差別はなく、みんな霊と心の働きを通じて、天地の中にあるいろんなものを備え、衣食住の必要を満たし、自由に生き、互いに妨げずに安らかにこの世を過ごす、ということになるはずだ。

 しかし、今現在、人間の世界を見渡すと、賢い人もいれば愚かな人もいるし、貧しい人もいれば裕福な人もいる。身分の高い人もいれば低い人もいて、その状況はまるで雲と泥のような大きな違いがある。これは一体なぜだろうか。

 その理由は非常に明らかだ。『実語教』という本に、「人は学ばなければ知恵がなく、知恵のない者は愚か者である」という言葉がある。したがって、賢い人と愚かな人の違いは、学ぶか学ばないかによって生じるものだ。また、世の中には難しい仕事もあれば、簡単な仕事もある。難しい仕事をする者を身分の重い人と呼び、簡単な仕事をする者を身分の軽い人と言う。心を使って考える仕事は難しく、手足を使って力仕事をするのは簡単だ。そのため、医者、学者、政府の官僚、または大きな商売をする町人、多くの百姓を雇う富裕な農民などは、身分が高くて尊ばれる者とされる。

 身分が高ければ、その家庭も富んでおり、他の人々から見れば到底追いつけないような状態になる。しかし、その差が生まれたのは、ただその人が学問に力を入れているかいないかによるだけであり、それは天から与えられた固定された約束ではない。諺にもあるように、「天は富貴を人に与えず、これをその人の働きに与える」と言われている。したがって、前述の通り、人は生まれながらにして貴賤や貧富の差はない。ただし、物事をよく知るために学問に励む者は貴人であり富裕者となり、学問のない者は貧しい人で下層の者となるのだ。」

読みましたか?よろしい。

では次に、記述式だと分かりにくいので、選択問題にします。確認した「大事なところ」に基づいて、答えを選んでみてください

問 この文章において筆者が言いたいこととして、最も適切なものを以下の中から選びなさい。

①人はみな平等だ。

②差別のない世の中を目指すべきだ。

③真面目に勉強しろ。

いかがでしょうか?

おそらく多くの方が、文の最初の「天は人の上に人を造らず、また人の下に人を造らず」をポイントに挙げると思います。

なんとなく聞いたことのある言葉だし、いかにも名言ぽいですよね。ここをポイントに挙げたくなるのは当然です。

となると答えは①となります。

・・・本当にそうでしょうか?もちろん、まちがっています。正しい答えは③です。

なぜそう言えるのでしょうか?

◎解説

「当塾のルール」に従って、この文章の「大事なところ」をまとめると、以下のようになります(ほぼそのまま抜き出しただけなので、文意はやや分かりにくくなっています)。

【しかし、今現在、人間の世界を見渡すと、その状況は雲と泥のような大きな違いがある。

これは一体なぜだろうか。

その理由は、学ぶか学ばないかによって生じるものだ。

しかし、その差が生まれたのは、ただその人が学問に力を入れているかいないかによるだけである】

さらにまとめると、三文めと四文めは同じようなことの繰り返しです。

表現も少し分かりやすくするとこうなります。

【現在、人間世界を見渡すと、大きな不平等がある。

その差が生まれる理由は、その人が学問に力を入れているかどうかによるのである。】

これは、私が基準に従ってまとめたもので、福沢諭吉の言いたいことかどうか正確には分かりませんが、たぶん間違ってはいないでしょう。

少なくとも、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」=人はみな平等である、と言いたいわけでないのは確かです。

まったくの逆で、「人は平等ではない」と言っているのです。

言葉足らずなところを補って分かりやすい表現に直せば、以下のようになります。

【一般的には「人はみな平等」と言われているが、実際にはそうではなく、世の中には大きな不平等がある。

そうした不平等が生じてしまうのは、その人が学問に力を入れているかどうかが原因だ。】

◎塾での教え方

ここまでをまとめるときに使った「当塾のルール」は以下のようなものです。

・逆接 しかし

・疑問表現 だろうか(問題提起→その答えを探す)

・具体抽象 抽象的な部分を抜き出す

文章で説明されても分かりにくいですね。

授業ではこのような書き込みを指示して、見た目に分かりやすくしています(蛍光ペンは資料用で、授業では使いません)。

◎問題の解答

さて、【不平等が生じるのは、学問に力を入れているかどうかが原因だ】までは書いてありますが、【勉強しろ】とはどこにも書いていません。

しかし、【不平等が生じるのは学問に力を入れているかどうかなのだから、そういう扱いを受けたくなければがんばって勉強しろ】、という解釈は可能です。

言いたいことの中心(話題・主題)はあくまでも「学問」です。平等や差別ではありません。

よって、答えは③です。

ついでに言えば、この文のタイトルは『学問のすすめ』です。福沢諭吉は慶応義塾大学の初代学長であり、学生たちに向けてこのようなメッセージを送ったのです。

こういうのもヒントになるのです。見落としてはいけません(こういうのを、「卑怯だ!」という人は考え方を変えましょう。確認が甘いです)。

読み手の印象でなんとなく「大事なところ」に注目してしまうと、とんでもない誤解が生じてしまうことが分かっていただけたでしょうか?

○読む時のポイント

せめて、「逆接表現(しかし、でも、など)の後ろに注目する」というルールを知っていたら、大きな間違いは防ぐことができたことでしょう。

さらに、実は一番のポイントは、【これは一体なぜだろうか。】という「疑問表現」です(=注目表現◎)。

これが「問題提起」であることを確認し、その疑問の「答えを見つける」意識があれば、より正確な理解ができたはずです。

※ちなみに「天は人の上に人を造らず、また人の下に人を造らず」を「福沢諭吉の名言」として紹介する人やサイトがありますが、この記事を読めばわかると思いますが間違いです。

一般的にはそのように言われているが、私(福沢)の意見は違う、という構造なので、これは彼の造語ではなく、世間一般に言われていた言葉です。

こういうのも雰囲気や印象だけで判断することによる弊害ですね。

◎まとめ

このように、文章を正しく理解できる人とできない人の不平等が生じてしまうのは、読む時のルールを知っているかどうかによるのです。

「大事なところに線」を引く、のは間違いということが分かったでしょうか?

厳密に言えば、それ自体が間違いなのではなく、「大事なところ」について明確なルールや基準のないことが問題なのです。

では、そのルールや基準とはどのようなものなのか?

それは記事に示した逆接、順接、疑問などの「表現のチェック」と、

対比・具体抽象などの「読む時のポイント」という形で、当塾ではまとめています。

こういうルールはどこの塾にもそれなりに存在するものですが(逆接などは誰でも聞いたことがあるはず)、それを塾全体の統一したルールとして、実際のテストでの運用も含めて具体的にトレーニングさせる指導のスタイルは少ないと思います。

他にもいろいろありますが具体的には・・・当塾にお問い合わせください!(笑)

ちなみに、このチェックやポイントのルールだけを覚えても意味はありませんよ。

ルールを覚えた上で、その運用の仕方を体得しないと、ただの面倒な作業になってしまいます。

将棋の駒の動かし方を覚えただけでは勝てないのと一緒です。

◎文章の出典について

①原文 青空文庫 https://www.aozora.gr.jp/cards/000296/card47061.html

※くわしくは青空文庫の「著作権の切れている作品」の項目を参照https://www.aozora.gr.jp/guide/kijyunn.html

②現代語訳は文章生成AI(ChatGPT)による訳出を参考にしています。

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